市民対談1

堀内 通成 × 水口かずえ

 

市民参加、住民自治
小平に高層マンションは必要ですか?
市民と一緒に検討する。



 堀内 通成さん

仲町、こだいら市民提言の会、会の分科会「こだいら市民財政白書をつくる会」で2009年、2016年に「小平市民財政白書」を刊行。小平市民まちづくり互助会


道路の問題は市、全体にかかわること。

市民の意見を反映させたい

 

堀内 水口さんが小平のまちづくりにかかわるきっかけは、道路問題だったんですか。

水口 はい。玉川上水を分断する大きな道路の計画があるのを知って、詳しく知りたいと「考える会」を作ったのが2008年4月です。予定地の実情や交通状況、道路の影響を調べたり、地元の意見を聞いたり、市や都に質問を重ねたりするうちに、市民生活を一変させるほどの計画なのに住民の声が反映されないのはどうしてなんだろうと、どんどん疑問が大きくなっていきました。

堀内 そして、私たちの「小平市民まちづくり互助会」にも来られた。

水口 まちづくり互助会にはさまざまな市民活動にかかわっている方々が参加されていて、道路問題や環境問題だけで話していると気づかないことを、広い視野から指摘してくださいました。お話を聞く中で、道路のことは市全体にかかわることが改めてわかりましたし、市内全体の道路計画について市民の意見を反映させるのが大事だということがはっきりしました。住民投票を提起していく重要な視点が得られたと思っています。

まちづくり互助会は市民活動の横のつながりの連絡会的な存在で、堀内さんご自身の活動の中心は「こだいら市民提言の会」ですよね。

 

活用されなかった!?

公募の市民がつくった提言書

 

堀内 そうです。提言の会の成り立ちを振り返ると、そもそもは小平市第3次長期総合計画策定のためのワークショップ、「まちづくり会議」の活動がありました。2004年に、市がワークショップの参加者を公募しまして、応募した市民が集まった。私もそのひとりです。

水口 もともとまちづくりに関心があったんですか?

堀内 昔は市報を読んだこともありませんでした(笑)。ただ、私は建築設計の仕事をしています。建築はまちのなかにあり、都市計画や環境もみなかかわるわけです。妻から市報にワークショップの募集があると知らされて、もともと興味があったので参加しました。

ワークショップの参加者は36人。4つのグループに分かれて、9カ月間をかけて検討を重ねて「こだいら市民提言書」を作成したんです。

水口 9カ月も!

堀内 土日の活動でしたから。とはいえ、後半は毎週のように集まりましたね。とにかく みんなでがんばって提言をまとめましたから、第3次長期総合計画策定のための検討委員会では、この提言をもとにしっかり議論してほしいと期待していたんです。ところがいざ検討委員会が始まってみると、論議どころか。議場に提言書を持参している委員もほとんどいなかったんですよ。

水口 そんなに時間をかけて市民が作り上げた提言なのに、全然生かされなかった?

堀内 提言書では「『市民参加のまちづくり』の推進」、「住民参加を保障する『条例』づくり」、「まちづくり『総合窓口』の創設」、「財政運営の効率化、健全財政の運営」を大きな課題として掲げ、「ひと」、「くらし」、「まち」、「自然」という4つのグループからの具体的な提言をしました。それが結果的には「まとめました、終わりです」ということになってしまった。

水口 おかしいですよね。

 

市民の視点で財政を点検し、

自らの手で白書を作り上げた

 

堀内 そこで、私たちの提言がどこにどう反映されているのかを市に問いかける必要があるし、反映されるように働きかけようと有志で活動を続けることにしました。

水口 市からの回答はあったんですか?

堀内 市の政策も私たちの提言も、大項目でタイトルをつけるときにはそれほど違いがないのは当然ですよね。そこで「反映していますよ」と市は言うわけですが、具体的なところでは、反映されているとはいいがたい。情報を公開してほしいというやり取りをし、提言書をもっと反映してほしいということで市長との対話を求めたりというなかから、財政白書をつくる活動につながっていきました。

水口 市民としてはなかなか手が届かない財政のことを市民の視点で点検するって、すごいことだと思います。

堀内 僕自身、財政にはまったく弱くて、最初はよくわからなかった。多摩住民自治研究所の大和田一紘先生の講座を、公民館の市民学習奨励学級で何回も受けて、長期的な財政の分析、社会情勢や政権と財政的な変動とのかかわり等々、みんなで勉強して、2009年に最初の「小平市民財政白書」を刊行しました。

書いていて楽しかったのはコラムでした。財政というと硬い印象ですし、読みやすくするために、「コーヒーブレイク」と題するコラムが大事だと言われて、それをつくろうということになったんですね。例えば私は「教育」を取り上げて、教育委員会がどういう経緯ででき、どのようになっていったかを調べて書いた。軽いコラムを目指したんですが、みんな市に対する思いが強いのでつい力が入ってしまって(笑)、「こんな重いコーヒーブレイクはない」と言われました(笑)。

水口 市のこれからに反映していくべき市民の視点の白書で、昨年2016年には第2弾を出された。「1回やりました」というのではなく継続されている、その姿勢がすばらしいし、学びたいと思います。

 

財力は、市民のために使ってほしい

住民は高層再開発を望んでいるの?

 

堀内 白書をつくる過程でわかったのは、財政でいうと、国や都の影響が強くて、基礎自治体である市の裁量というのは大きくないということでした。特別な事情を抱えた自治体はまた違うのかもしれませんが、小平は多摩26市の中でも、財政状況は中の下あたりに位置している、ふつうの、小さな市です。だからこそ、貴重な市の財力を、ほんとうの意味で市民のために使ってほしいし、そこには市民の声をとりいれてほしいものと思いました。

水口 ええ、もっと住民の声をとりいれてほしい。道路問題で実感したのもそこなんです。市は計画ありきで、しかも都の計画道路だからと住民の声を聞こうとしない、でも小平にとって重要な計画、大事なことにはまずは、ここで暮らす住民の声を聞いてほしいと思います。

今も、たとえば小川駅前、小平駅前の再開発計画にしても、住民の声を聞いて進もうとしているんでしょうか。どちらも地上100メートル近くの高層マンションをつくるといいますが、みんなが望んでいることなのか。小平駅北口に昔から住んでいる方とお話したら、「代々引き継いできた家屋敷を引き払って高層マンションに住むことは考えられない」、「静かで落ち着いた暮らしを守りたい」とおっしゃっていました。そういう声に耳をかたむけることなく計画がすすんでしまっては困ります。

 

市が決め、納得させるやり方は限界

住民の声を聞いて、市民参加のまちづくりを

 

堀内 小平駅北口でいえば、生活道路の整備が必要という声は、そうだろうなと思います。では高層再開発が必要ですかというと、どうでしょう。小平には似合わないと思っている人は多いんじゃないでしょうか。

水口 市のお金、つまり税金も使われるわけで、採算がとれるのかというのも心配です。

堀内 地元の活性化につながるのかどうかも疑問。これまでの駅前高層再開発の例と照らし合わせると、駅直結の暮らし方の人が増えるだけではないかとも考えられます。そうしたことを含めて、今この時点で立ち止まって、しっかり検討する勇気を持つべきではないでしょうか。

水口 ええ、市が決めてしまって、それを一生懸命住民に納得してもらうというやり方に無理がある、もう限界にきているのではないかと思います。かき消されそうな声もきちんと聞く小平でありたいですよね。

堀内 住民の声を聞き、市民参加をすすめている自治体はたくさんあって、条例でさまざまな制度をつくっています。たとえば大規模な土地取引をしようとする土地所有者や、新たな開発事業計画を前提として大規模な土地を取得しようとする者は、構想段階の計画変更が可能な時期までに市に届け出しなければならないという制度がありますし、あるいは開発事業を行うには環境配慮をしなさいという制度があります。これはどちらも三鷹市の「まちづくり条例」で定められているものですが、ほかにも住民の声を聞き、市民参加のまちをつくる先進的な参考事例はさまざまあるんです。

水口 調べてみると、住民の声を生かしたまちづくりは実際にできるという例がたくさんあります。それらに学びながら、小平をもっと住みよい、いいまちにしていきたいと思います。