市民対談4

平山 純乃 × 森 幸子 × 水口かずえ

 

福祉を推進する

たらい回しにせず、

困っている人の力となる。



平山 純乃さん

小川西町、東京都立小平特別支援学校PTA副会長、四人の子の母

森 幸子さん

学園西町、三人の子の母


困ってること、必要なことはみんなそれぞれ。

 

障害のある、ひとりひとりに合った支援を

 

水口 平山さんはお子さんが4人いて、おひとりに障害があるとうかがいました。

平山 はい、4人の男の子がいて、2番目が結節性硬化症という病気で障害があって。車いすで暮らしていますが、この子の病気は治ることのない難病なので、進行が心配です。

水口 進行する病気というと、筋ジストロフィーのような?

平山 あ、それは全然違います。難病って、すごくたくさんあるんですよ。結節性硬化症は内臓や骨やいろいろなところに腫瘍ができる病気で、さまざまな症状があります。

 薬もたくさん飲むのよね。

平山 そう、日常的に大切なのはお薬で症状をコントロールすること。特に、てんかんのコントロールがとても大事なんです。うちの子は今10歳で、この病気では、てんかんの重責という、重い発作が心配な時期です。そこで、きのうもてんかん発作をモニターするために役立つ、サーチュレーションモニターという血液中の酸素濃度を測る器具を買ったんですが、これが高い。ピンからキリまであって、定評のあるものだと8万円とかするので、まあ日本産でいいかって、1万3000円のを買いました。

 自分で買わないといけないの?

水口 補助はないんですか?

平山 ええ、これは。

 でもそういう補助って、自治体によって違うでしょ。

平山 そうみたい。医療への補助もそうだけれども、障害のある子への対応っていうのかな、どれだけ助けてくれるかも自治体によって、同じ自治体でも担当者によって変わってきたりする、むしろそういうことをなんとかしてほしい。

水口 担当者によって違うんですか?

平山 たとえば、うちの子の場合、お風呂とごはんと清拭の介助に、1時間半ずつ週3回ヘルパーさんに入ってもらってます。そのために市にお願いして、担当者と何度も何度も何度も話しあって、うちにも来てもらって。そこまで来て、「これは必要ですか」とか言う担当者もいます。なんなんだろう、必要だからお願いしているのにって思うんです。それでやっとわかってもらえても、翌年度に担当が変わるとまた最初からというようなことがある。

 がっくりするよね。

平山 たしかにお金はかかるし、福祉ってむずかしいとは思うんですよ。障害への援助にしても、ここが困ってる、これこれのサービスがほしいというのが、みんな違う。この前、小金井特別支援学校の親御さんたちと話す機会があって改めてそう思いました。病弱の子、視覚の障害、聞こえの障害、いろいろあって、自分なりの世界観が強くて新しい環境に行くことがむずかしい子の場合は移動もたいへん。その子その子にあった支援が必要なんですよ。

 

せっかくの「制度」、なぜ柔軟に活用できない?
保育園の入園申し込みを断られた!

 

 一律に同じようなことをやっても意味がない。

平山 そうです。それに、制度に柔軟性がないというか。例えば「移動支援」という、ひとりでは移動がむずかしい子、むずかしい人にガイドヘルパーがついてくれるサービスがあります。でもこれ、通学には使えないんです。

水口 えー、なぜ? 

平山 その子の社会性をアップさせるためというので、休みの日に六都科学館に行くのはOKだけれど、通学はダメ。それも自治体によっては条件付きで例外というのもあるそうだけど、とにかく小平では使えない。

 親がいけないときだけでも使えるといいのに。

平山 そうなんですよ。次男を支援学校へ連れていくのに、みんなで車に乗って、まず三男を小川保育園、四男を津田保育園において、それからって1時間コース。うちの子はシートベルトをしっかりできて、車に乗せておけるからいいけど、それが動いちゃう子だったり、もっと小さな子がいたりするとたいへん。だから通学で移動支援が使えるといいのにっていつも思います。

水口 ひとつひとつ、どこまで市ができて、どうすればいいか、ちゃんと考えなければならないことばかり。

平山 この春から三男四男の保育園が一緒になるので、少しは楽になるんですけど。でも、保育園に入るのも、ほんとにたいへんで。夫の話を聞いても、部下の人で公立は入れなくて、嘆願書を出したりしても無認可しか入れなかったりとか、あるって。

 私の場合は突然、そういう状況になったのね。子どもたちが1歳、8歳、10歳のとき、夫が半年間の闘病の後に亡くなった。そしたらすぐに、働いているお母さんが電話をくれたの。「保育園に入るのはたいへんだよ。悲しくて落ち込んでいるときだろうけど、すぐに市役所行って、保育園申し込みなさい」って。行ってみると、窓口で「お母さん働いてらっしゃいますか?」と。「お仕事してらっしゃらないなら、保育園に申し込む資格がないです」って。

平山水口  えー。

 状況を詳しく話して、今のまま仕事を探すのは無理なのでって言っても、「規則ではお父さんとお母さんが働いて、職歴の長い順に入れるので、森さんの場合はどれにも当てはまらないから無理です」って。呆然です。これまで彼が一生懸命働いて税金払ってたのはなんだったんだ、困ってる人のためじゃなかったのって。

 

「困ったとき」、「困った状態」になった時こそ

 

行政サービスが必要です

 

 それからはもう怒り。いろんな人に相談して、「上の人を呼んでください、日時を決めて話し合いましょう」ってことにして、友達にも来てもらって。とにかくいろいろあって、なんとかシャッターをこじ開けたんです。

水口 そうだったんだ。でもお友達がいてくれたから。

 そうそう、後押ししてくれる友達がいたから。それから、市役所に行く間、子どもをみてくれる友達がいたから。そういう人たちがいたから戦えた。そうでなければできなかった。ほんとにパワーがいるんです。

平山 そういうことでウツになっちゃうお母さん、いっぱいいるじゃないですか。

 いるいる。だって、悲しみや辛さや生活苦を持っていてだから助けを求めているのに、行政に頼んで断られたら、沈む以外ない。

平山 そうなっちゃう。先日もね、障害のある子のお母さんが離婚して、引っ越したんですが、もう手続きやらなにやらたいへん。いっしょに市役所に行って全部やりました。でも彼女は「助けて、どうしていいかわからない」ってSOSを出してくれたから、なんとかなったけど、そうでなかったらと思うと。

水口 ほんとですね。小平の人ですか。

平山 隣の市です。ほんとは小平に来たかったんだけれど、子どもの車いすを作っていて、その期間はお金を出してもらっている市からの移動ができないんですよ。

 えー、だれのためのシステムなのって思いますよね。

平山 そう、全部がパターンで。

 結局、行政って、両親がいて、子どもが2人いてという「ふつうの家庭」を対象にしてると思うんです。それが大多数だから。でも行政サービスをいちばん必要としているのは、障害児がいたり、夫を亡くしたとか離婚したとか、病気を持ちながらひとりで生活してるとかということで、困った状態にある人たち。私も、夫がいたときは市役所行くことなんてなかった。それが夫を亡くして、申請とか、しょっちゅう行くことになったし。

平山 ほんとにそう。私も正社員でしっかり仕事して、家では育児してって、絵にかいたような親子3人の生活だった。それがたまたまこうなってみると、行政って、なぜイレギュラーを認めてくれないんだろうって思います。

 

死別でも離別でも、親を失った子どものための

 

「グリーフケア」を小平で実現したい

 

 でも、平山さんすごいなって思うのは、3人目4人目をもうけたこと。障害のある子がいるとそのあとは、産むのをちょっと控えたりするんじゃないかって思うんだけど。

平山 そうね。でもきょうだいをもつって、けっこうあるんですよ。ふたりきりのきょうだいだとキーパーソンがひとりだけど、「3本の矢」なら強いというか。

水口 きょうだいみんなで支えられると?

平山 私たち、いつも「親なきあと」を考えてるし、だからきょうだいでもそう、同じ立場の親同士でもそう、みんなで助け合いたいと思うんです。

 そうね。私も助け合いたいと思うし、だから、夫が亡くなって10年、悲しみはいまもあるけれど、ようやく声をあげられるようになったから、今、できることをやる。そのひとつがグリーフケアです。

水口 グリーフケアって、親御さんを亡くした子のためのケアですよね。

 死別だけじゃなくて離別でもそう。残された人みんなを対象としますが、私がやりたいのは子どもためのケア。ある日突然、お父さんやお母さんと会えなくなったその喪失は子どもにとってはあまりに大きい。うちの子もあるNPOのグリーフケアに参加して、助かったなって思う部分もあります。

じゃあ、子どものグリーフケアって何っていったら、自由に遊ばせることなんです。遊んで遊んで遊ぶうちにぽそっとしゃべれるようになって、「つらいんだ」とか、「お母さんに会いたい」とか言える状態になる。それはおとなが聞き出すんじゃなくて、子ども同士で自然にでてくることもある。

水口 そのための遊びのスペースを設けようということ?

 具体的にはひとつ部屋がほしい。ボルケーノルームとか火山の部屋といいますが、安全な壁で、サンドバックがあって、人と自分を傷つけないように、でも爆発していい部屋。それがまず必要。行政に事業としてやってほしいんです。「親が死んだ子のためだけに税金は使えない」って言われたこともあるけど、だれがそうなるかはわからない。それに続けるためにはやはり、NPOとかではなく、公的にやってほしいと思うんです。

平山 障害のある子のきょうだいのケアの場も、あるといいなあと思います。

 

今すぐできることのひとつ

たらい回しにしない一括の相談窓口を開設してほしい

 

水口 いますぐ、小平市がすべきことはなんでしょう。

平山 いっぱいありすぎて。これひとつはという言い方はできないんですが、子どもの居場所のことはありますね。今、私はヘルパーで、重度訪問介護と言って重い障害のある子や医療的ケアが必要な子の介護の仕事をしながら介護福祉士を目指してます。今となってはこの仕事についてよかったなって思いますが、もともとは、2番目の子が小学校に入るとき、放課後過ごす場所がなくて、それで15年続けた会社を仕方なく辞めたんですね。しばらくして、どの子も利用できる、送迎もある、放課後デイサービスのNPOができて、誘っていただけた。あー、もうちょっと早くできていれば仕事を辞めなくてすんだのにって思ったんですよ。そういう居場所がもっと必要だし、あとはそうした放課後デイサービス事業は、18歳になると使えなくなってしまうので。そのあとの行き場も必要なんです。

水口 国の制度の中で、自治体が何ができるか、市民とどう協働していくか考えなければいけませんね。

平山 今すぐお願いしたいこととしては、相談窓口のこと。私、仕事してても、友達からも、いろんな相談を受けてます。病院でもドクターに「助かってるよ、障害あるあるは平山さんだね。窓口たたいてくれてるから」なんていわれてる。でも、市役所がもっとわかりやすければなって思うんですよ。今、受付の人がいるじゃないですか。なにしてるのかなーとか思う。

 そうそう、いらないよね。それよりもすくなくとももっとわかりやすいパンフレットがあればいいし。

平山 そうね、引っ越しのパンフレットはどこの自治体もよくできてると思うんですよ。わかりやすく、ていねいに、一週間前はこれこれをしましょう、3日前はとか書いてあって、チェック欄まである。

 そうね。あれはさっきの「ふつうの家庭」でも必要なことだから。そうじゃなくて、ほんとに困ってる人のための窓口が必要。ワンストップっていうんでしょうか、たらいまわしにしない、一括の窓口があるといいと思う。よろず相談所みたいな。例えば、がんになっちゃったっていったら、何課と何課にこういうのがあって、申請書類はここにあるって教えてくれる。あるいは、もっと進んで相談窓口の人がその場で調べてくれる、さらには担当の人みんな集めてきて、そこでいろんな相談ができたらいいですよね。

水口 そうした窓口を実践している自治体もあるでしょうし、まずはしっかり調べて、少なくとも、たらいまわしにしない一括の窓口はすぐにも必要ですね。

 うん! まずは困ってる人の力になってくださいということ。それを市に望みます。